曙橋の「大角玉屋(おおすみたまや)」(新宿区住吉町、TEL 03-3351-7735)が今年で110周年を迎えた。創業は1912(大正元)年。同店は「元祖いちご豆大福」の店としても有名で、1985(昭和60)年に3代目の大角和平(かずひら)社長が発案、販売を始めた。
コロナ禍の中でも変わらず店を続けてきた同店。創業110年を迎えても、実直な姿勢は変えない。現在でも毎月のように新商品開発にいそしむ大角社長は「長い間多くの方に支えられ、110周年を迎えることができた。本当にありがたいこと。真面目にコツコツと、ひたむきに和菓子作りに従事してきた」と話す。
同店は曙橋の本店をはじめ、四谷や銀座などにも店を構える。「続けることに意義があると考えている。何事もそうかもしれないが、伝統を守りながら慣習などにとらわれ過ぎず、時代の流れを見ることが大切。いちご豆大福も、時代や人々のニーズを読み取って完成した。そうすることで、これまでの長い道のりを歩んできた。全てはお客さまに、おいしい和菓子を食べ続けてもらいたいため」とも。
和菓子作りの基本は「良い材料を使うこと」だという。小豆は北海道産特選小豆「雅」、米は宮城県産「みやこがね」の特選米、水は秩父連山に湧き出る「秩父山水」を使っている。小豆は、あえて渋を抜かず、砂糖の量を控えめにすることで小豆本来の味を感じる餡(あん)になるという。
都内の和菓子店は年々減り続け、400軒を切った。「和菓子屋は家族経営などで切り盛りしてきた店も多いが、昔と同じやり方だと、どうしても一代で終わってしまうことも多い。一方で、新たに参入したとしても、初めてすぐに事業が安定する業界でもない。そういう理由から、少しずつ和菓子屋は減っているが、和菓子は、どの時代にも必要とされるものだと信じている。私たちは、職人の働く環境を整えたり、自ら考え抜く力を養ってもらったりと、さまざまな創意工夫で和菓子作りを伝え続けている。これからもこの店を守り、おいしい和菓子を届け続けたい」と笑顔で話す。
営業時間は9時~19時30分(日曜・祝日は18時30分まで)。