セブン-イレブン・ジャパン(千代田区二番町)は3月1日、移動販売サービス「セブンあんしんお届け便」の運用を北海道上川郡比布店で開始した。
今回が北海道初進出となる「セブンあんしんお届け便」は、商品を積んだ専用軽トラックで、主に過疎化・高齢化が進んだ限界集落等の団地や公園広場などを巡回する、いわば「出張コンビニ」。2011年5月、茨城県での運用を皮切りに、東日本大震災の被災地などでも活躍し、現在8県11台の専用車が稼働している。
同専用軽トラックは、5つの温度帯に対応した商品棚や電子レンジを装備した特別仕様で、おにぎりや弁当などの食品類や生活必需品など約150アイテムを搭載。同社オリジナルの、パウチに入った総菜シリーズも好評だという。同サービスは巡回販売に加え、個人宅への受注配達など「御用聞き」も併せて行っている。
同サービスの目的は、全国に推計600万人いるとされる「買い物弱者」の救出。買い物弱者とは、過疎化・高齢化が進む地域を中心に、小売店の減少や交通機関の廃止などによって日常の買い物が困難な人々を指す。同社は3年前から構想をスタート。全国に先駆け、商域外の買い物弱者に店側から寄り添っていく形態を打ち出した。
同様に買い物弱者を救うと考えられる、「ネット通信販売」や「宅配サービス」との違いについて同社は、「コミュニティーの活性化」と「商品を選ぶ楽しみの提供」を挙げている。
コミュニティー施設を巡回することで、集まった住民同士の交流が自然と生まれていることに着目。ある地域では町内会が巡回日に合わせて町内会館を開放、購入した弁当などを館内で食べることができ、一人暮らしの高齢者などが他者と顏を合わせる貴重な機会を生み出しているという。商品を選ぶ楽しみも、小売店の少ない過疎地域では貴重だ。
「お客さまの感覚として、これまでは『24時間開いているから安心』であったものが、『セブン‐イレブンに行けば誰かに会えるから安心』という、コミュニティー意識を重視したものに変わりつつある。過疎地域の店舗ではお客さまと顔見知りという場合も多く、当サービスは地域貢献という意識を持つオーナーさんがほとんど」と同社広報の福田さん。
現在、過疎地域を中心とする同サービスだが、今後は地方都市の団地や住宅街での導入も視野に入れているという。地方都市では車の所有が増えたことで郊外型の大型ショッピングセンターに客が流出、小売店が減り、特に駅前商店街の「シャッター街化」も問題化している。そうした地域の高齢者は、人口の密集地にいながらにして買い物弱者となっている。
創業以来「近くて、便利」を掲げてきた同社。業界最大手の同社の今後の動向に注目が集まる。