神楽坂通りの街路灯が約20年ぶりにリニューアルされて1カ月がたった。デザイン・設計施工監理を担当したのは、神楽坂商店会の役員でもあり、2020年3月にリニューアルオープンした「九段坂公園」など、全国で数多くのランドスケープデザインを担う「Tetor(テトー)」(新宿区神楽坂)デザイナーの山田裕貴さん。
2001 (平成13)年に設置された神楽坂オリジナルデザインの街路灯は、1991(平成3)年に「神楽坂まちづくりの会」が新宿区に提言した「神楽坂のまちづくりのコンセプト」の目標として定めた「伝統と現代がふれある粋なまち 神楽坂」を体現した当時の商店会役員による苦心作だったという。
新しい街路灯は以前の街路灯よりも照度を増して明るくし、色温度に配慮されている。以前は街の風情に配慮して明るさを抑えていたが、「安心・安全なまちづくり」にも配慮したという。色温度に関しては「人が明るく感じるためには青白い色にした方が良いが、人の心を温かくするためには電球のような赤みがかった色にした方が良いと考え、若干色温度を下げて人の心に温もりを感じさせる優しいLED照明にした」とも。
神楽坂通り商店会の会長で、「神楽坂 助六」3代目店主の石井要吉さんは「新規街路灯を製作するに当たり配慮したことは、神楽坂のまちづくりのコンセプトに沿った物にするという姿勢は変えないこと。松尾芭蕉の俳諧理念に『不易流行』という言葉があり、三省堂の『新明解四字熟語辞典』では『いつまでも変化しない本質的なものを忘れない中にも、新しく変化を重ねているものをも取り入れていくこと』と書かれていた。『伝統と現代』『日本と外国』という相反するものを共に認める多様性が神楽坂の特性でもあると考え、表現することを心がけた」と話す。
「1991年以来、神楽坂では地域住民が主体となり、官民一体となって神楽坂の地域特性、神楽坂らしさを求めるまちづくりを目指してきた。来街者にとって唯一、目に見える物が街路灯。それだけに他所の模倣ではない神楽坂の独自性にこだわった」とも。