三生医薬株式会社(本社:静岡県富士市、代表取締役社長:今村 朗)は、2025年3月に札幌で開催された「日本農芸化学会2025年度大会」において、「口に入れて香って効く」新しい製剤設計をテーマにした研究成果を発表しました。
本発表では、香気成分が口腔内から鼻腔へと抜ける「レトロネーザル経路」に着目し、製剤のタイプによって香料の知覚がどう変わるかを、リアルタイムの香気測定技術を使って可視化し、製品開発に直結する示唆を提供しました。“香り”を健康機能として活用するという新しい視点に、企業や研究者から「商品価値を向上させる」「おいしく飲める製剤設計に役立てられる」といった高い関心が寄せられました。
本研究にご関心のある方には、参考資料を個別にご案内します。
▼研究内容の概要
<研究の背景と目的>
私たちが香りを感じる経路は、香水やアロマなどが鼻から香る「オルソネーザル香」と、食品や飲料などが口腔内から鼻に抜けて香る「レトロネーザル香」があります。弊社は香料の機能性に着目した研究を進める一方、その香料を製剤に配合し、口に入れて香って効く製剤の研究開発も進めてきました。一方で製剤によってレトロネーザル香の強さや感じ方の違いを議論した研究はなく、商品設計の課題となっていました。
<実験方法の概要>
こうした背景のもと、口に入れて香って効く製剤の設計のため、弊社の各種製剤(シームレスカプセル、新食感カプセル(仮称)※、チュアブル錠、発泡錠)を咀嚼して食べる際に、どの程度の香料の量がレトロネーザル香として鼻に抜けるか、その際の感じ方はどの程度の強さなのか比較する必要がありました。そこで、17名の健常者を対象に、食品香料で良く用いられるリモネンと酪酸エチルを配合したシームレスカプセル、新食感カプセル、チュアブル錠、発泡錠を咀嚼して摂取してもらいました。同時に、鼻にカニューレを接続した匂いセンサーを用いたリアルタイムレトロネーザル香強度測定、Time Intensity法を用いた被験者が感じたリアルタイムレトロネーザル官能強度測定、咀嚼タイミングの計測を行いました。
※新食感カプセル(仮称):三生医薬が独自に開発したソフトカプセル製剤。噛んで食べることを前提に設計されており、ゼラチン皮膜で内容物を包んだ弾力ある食感が特徴。味・食感・香りを組み合わせた“おいしく食べて続けられる”サプリメント設計が可能です。
<主な研究成果と意義>
シームレスカプセルと新食感カプセルの比較では、香料の量当たりのレトロネーザル香強度は新食感カプセルの方が2~3倍に上昇しました。新食感カプセルでは咀嚼回数が2.5倍多いことが影響していると考えられます。一方、チュアブル錠と発泡錠の比較では、香料の量当たりのレトロネーザル香強度は発泡錠の方が1.2~2倍に上昇した一方、咀嚼回数は発泡錠の方が少ない結果でした。レトロネーザル官能強度測定では製剤間で明確な差が出ず、センサーでの測定によって初めて見出された現象となります。
同じ量のレトロネーザル香を担保するために各種製剤に配合が必要な香料の量が分かることで、口に入れて香って効く製剤の設計に役立つと考えられます。本研究の成果を生かし、機能性香料を配合した製剤の製品開発を進めてまいります。
▼学会での反響
学会会場では、発表を聞いた企業関係者や大学研究者から以下のようなコメントが寄せられました。
- 「安全性の面で、新しい香料原料を作るのは難しいため、健康機能付与で商品価値を上げている背景があり、参考としたい」(民間企業研究者)
- 「香料のみで健康機能をうたうのは難しいので、機能性食品として売り出すときにこういったデータがあると良い」(民間企業研究者)
- 「健康機能性だけでなく嗜好性にも着目して、おいしく飲める製剤設計に役立てられる可能性がある」(民間企業研究者)
- 「GC/MS法と違ってリアルタイムデータを用いて議論できるので興味深い」(大学研究者)
- 「サプリメントを提供するお客様に香りも楽しんでいただきたいので興味深い」(民間企業研究者)
▼今後の取り組みと連携に向けて
今回の研究成果を活かし、新食感カプセルや発泡錠など、「口に入れて香って効く」という新たな付加価値を持つ製剤の普及を目指します。さらに、機能性香料を口に入れて香って効く製剤に配合する機能研究を今後実施していく予定です。香りの力を科学し、"噛んで感じる"機能性の実現を目指します。
「口に入れて香って効く」サプリメントの未来に向けて、レトロネーザル香と製剤技術の新たな可能性に挑んだ研究開発本部の山田和哉、大石悠太郎、黒野昌洋(右写真)。研究や製剤応用に関心のある企業・研究者の皆様と、ぜひご一緒できればと思っています。お気軽にお問い合わせください!
▼研究開発本部長のコメント
三生医薬 常務取締役 研究開発本部長 又平 芳春は、今回の発表に際し次のように述べています。
「これまで“香り”は嗜好性の領域で語られることが多く、健康機能と結びつけた研究は限られていました。私たちは、“口に入れて香って効く”という新たな視点から製剤を再定義し、機能性食品・サプリメントにおける香料の可能性を科学的に示すことに挑戦しています。
今回の学会発表はその第一歩であり、多くの研究者や企業の皆様と共に、香りの価値を広げていけることを願っています。“五感に訴える機能性”という新たな価値領域への挑戦を、これからも継続してまいります。」
▼お問い合わせ先
参考資料の提供をご希望の方、また本研究成果を活用した製品開発・共同研究にご関心のある方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。
三生医薬株式会社
広報・アウトリーチ担当 藤作(ふじさく)
Email: kenichi.fujisaku@sunsho.co.jp
三生医薬は、これからも世界の人々の心と身体の健康に貢献すべく、健康食品・サプリメントOEMメーカーという枠を超えて、最先端の製剤技術の追求に挑み続けます。
▼新食感カプセル(仮称)について
三生医薬が独自に開発した「見た目・味・食感」を楽しむことができる新感覚のソフトカプセル。ソフトカプセルならではの有効成分保護効果とおいしさの両立を実現。
▼三生医薬株式会社について
【所在地】静岡県富士市厚原1468
【代表者】代表取締役社長 今村 朗
【設 立】1993年11月
【資本金】1億2,338万9千円
【売上金】250億800万円(2024年3月期)
【従業員】700名(2025年1月現在)
【事業内容】健康食品、医薬品、一般食品、雑貨等の企画・開発・受託製造
【会社HP】https://www.sunsho.co.jp