パン店「神楽坂 亀井堂」(新宿区神楽坂6)が6月14日で閉店した。店前では、閉店を知らせる貼り紙を見て、行き交う人々が驚きの表情で立ち止まる様子も見られる。
同店は1890(明治23)年創業の上野亀井堂の支店として創業。その後、銀座数寄屋橋で35年営業し、26年前に神楽坂に移転した。開店当初から地域密着型の店として親しまれており、ここ数年は全国から足を運ぶ客も多かったという。
閉店理由は、建物の老朽化と職人の高齢化。開店当時から同じ職人で神楽坂亀井堂の味を守り、コロナ禍でも毎日500個以上のクリームパンを販売するなど、その人気は衰えなかった。しかし、建物の老朽化も進み、職人のことなどの事情を考慮して閉店を決めた。
看板商品はグローブ型のクリームパン。開業当初は、シュークリームなどの洋菓子も人気の店だったが、常連客の要望でオリジナルのクリームパンを開発。洋菓子に用いるカスタードクリームをベースに、パンに合わせたレシピを作ったという。「当時は洋菓子のほか、店頭にテントを張って揚げパンを販売していたが、クリームパンはお客さんの声から生まれた。思えばその時から今まで、お客さんにずっと支えられてきた店だった」と社長の倉木寛さんは振り返る。
倉木さんは「当店は最初からお客さんの口コミで支持してもらえた店。国内外を問わず、メディアからの取材依頼も相次いでいたが受ける取材は絞っており、本当に大切なのは利用してくださっているお客さんだと考えていた。おかげさまで、口コミがさらなる人気を呼び、遠方から足を運ばれる方も多かった。閉店の知らせを伝えた時、長年利用されているお客さんの中には涙する方も。それだけ神楽坂亀井堂が愛されていたのだと思うと、非常に感慨深い。長い間多くの方に支えていただいて感謝の気持ちでいっぱい。今まで本当にありがとうございました」と思いを伝える。