新宿歴史博物館(新宿区三栄町)の職員、井口たくみさんが描いた「コミック新宿史 新宿ジオラマ奇譚(きたん)」が開館30周年を記念して発売された。
同書は、現在同館でミュージアムグッズやポスターのデザインを担当しているデザイナーの井口たくみさんによる、ハードボイルドとSFと風刺で「味付け」された不思議な物語を「バンド・デシネ」風のアートな漫画で表現している力作。
物語の舞台は新宿歴史博物館をモデルにした四谷三栄町の「千年ミュージアム」。主人公はオーナー学芸員で忍者の末裔(まつえい)という「未来創丸」。天才ジオラマ師の主人公は夜ごと自作のジオラマの中をさまよい歴史に立ち会う設定。第1章はアングラ文化全盛の1960年代。新宿のバーで「寺山修司」と「赤塚不二夫」が酒を酌み交わし、「三島由紀夫」が物騒な計画を誰かに指示している。
井口さんは「史実に虚構が入り込んだコミックをミュージアムグッズにできないか」と考え、他に類を見ない歴史コミックを実現した。「描きたかったのは、新宿はいつの時代もカウンターカルチャーの街だということ。健全化が進み、都市の破壊力が失われているが、新宿ってこんなにパワーがあったんだと知ってほしい」という井口さんの「新宿礼賛」は主人公の創丸に託されている。
構成は、第1章から時代をさかのぼり、昭和から明治、江戸から古代、縄文時代まで全8章、各章ごとに歴史博物館学芸員の詳細な解説も付いている。
コミック(A4版)の販売価格は1,000円。新宿歴史博物館、漱石山房記念館、新宿コズミックセンターなど区立施設で販売している。