日本全国の「ゆるキャラ」180体を掲載したイカロス出版(新宿区市谷本村町)の「きぐるみのほん。」。発売から2カ月が経過し、全国各地のタウン誌やスポーツ紙、「キャラ自身のブログ」などで紹介され販売も順調だ。同書の編集者・矢田歩さんに「ゆるキャラブーム」や今後注目したいキャラについて聞いた。
滋賀の「ひこにゃん」や奈良の「せんとくん」に代表されるいわゆる「ゆるキャラ」ブームが続いている。「ブームと言うよりも、もう定着している感じがある」と矢田さん。同書の企画について、「きっかけは私の地元・大分県の『めじろん』。地元のコンビニでキーホルダーや人形が売られていて、果たしてこういう不気味なものが受け入れられて、かわいがられるのだろうか。そんなところから、キャラクターについて調べてみた。『ゆるキャラ』の命名者であるみうらじゅんさんの本の販売からわずかな時間で、非常に多くのキャラが出現している。驚いた」と話す。
今後注目したいキャラについては「『ひこにゃん』と『せんとくん』は、現在別格の存在。『次にこれが来る』というものではないが、まず秋田の『のしろっち』。非常にゆるい。それから東京・豊島区の『としぼう』も面白い。全国各地に類似するキャラが存在する。後はやはり地元・大分の『めじろん』でしょうか」と3体を挙げる。
ゆるキャラは、単なる観光PR大使としてイベント会場に登場するだけではなく、グッズ販売の面で大きく貢献している。「ひこにゃん」による経済効果は約14億円との算出結果もある。キャラ自身のホームページやブログを所持していることも当たり前。キャラに年賀状や結婚式の招待状が届いたり、恋人候補が現れるなど、「キャラの擬人化・人格化」も進行している。「ゆるキャラカップ」「キグるミさみっと」などの集合イベントや、誕生したばかりのキャラが「早くOOOOO(有名キャラ)とコラボしてみたい」と宣言するなど、「他のキャラとのからみ」も話題に。まさにその一挙手一投足を各種メディアが追いかけているのが現状だ。
同書では「ひこにゃん」の成功について、著作権使用料を無料にした点を挙げている。地元中小企業のグッズ販売について容易な参入を促し、結果として大きな経済効果を上げることにつながっている。「キャラの権利関係については、おおらかなのが特徴。今回の書籍の制作でも、自治体とのやりとりが多かったが、そういった面でもスムーズだった」と振り返る矢田さん。「キャラづくり」は地域活性化の手法として、今後もしばらく注目を集めそうだ。