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四谷の「珈琲ロン」が70周年 建築家・池田勝也さんの記念講演会も

「珈琲ロン」外観

「珈琲ロン」外観

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 四谷の「珈琲 Lawn(ロン)」(新宿区四谷1、TEL 03-3341-1091)が12月1日で70周年を迎えた。

「珈琲ロン」建物の説明をする池田さん

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 同日には、3代目店主の藤井真智子さんが記念講演会を企画。店の建物を設計した建築家の池田勝也さんを中心に、建築家の大野二郎さん、手塚貴晴さん、由比さんらを招き、建物の歴史や建築にまつわるエピソードを関係者や常連客約30人に語った。

 建物は1969(昭和43)年に竣工。当時、池田さんは高橋てい一さんの建築事務所に所属しており、同プロジェクトを池田さんが担当。その後、池田さんが独立する際に高橋さんから設計を託され、全工程を一手に引き受けたという。

 湾曲したリブ付きコンクリートの外壁やスリット状の縦長い窓が印象的な建物は、吹き抜け構造が特徴。奥にあるらせん階段を上がると、「窓から光が柔らかく差し込む、隠れ家のような空間」が広がる。建物両サイドの壁は平行でなかったり、天井と壁の間には2センチの間があったりと、細部にも特徴がある。池田さんは「狭い空間をいかに広く感じさせるかに注力した。パルテノン神殿のように遠近法を取り入れ、店奥に行くほど通路を狭くすることで、視覚的な広がりを意識した」と話した。

 「喫茶店は現代の茶室」とも表現する池田さん。千利休の茶室などからも着想を得たという。「吹き抜けに光が差す空間や、包まれているような安心感が大切。評論家や建築家の先生たちからも影響を受けながら、建築に向き合った」と当時を振り返った。娘の手塚由比さんは「父が設計した自宅は、私自身が建築家を目指すきっかけにもなった。家を通して、父が建築について考えていたことを肌で感じていた。この建物に関しても、今改めて話を聞くと納得するものがある」と話す。

 戦前・戦後の日本を知る池田さんは「当時、人々は食べ物だけでなく、建物にも飢えていた」と回顧したうえで、建築家の使命として「まちづくり」を挙げた。「この建物を使う人たちの表情を思い浮かべ、それを表現した。良い建造物は世代を超えて人を引きつける。『珈琲ロン』が、これからも多くの人に愛され、地域活性化や街づくりに貢献する場所であり続けてほしい」と笑顔を見せた。

 大野さんは「建設当時は、まだ都電がこの辺りを走っていた頃だった。月日と共に街も変化していったが、変わらないものもある。近年は喫茶店人気も再燃していると聞く。街の人の交流場として『珈琲ロン』をはじめ、喫茶店はさらに支持されていくと期待する」と考察した。

 長い歴史の中で、建築家や小説家などものづくりに携わる著名人をはじめ、近隣住民に愛されてきた同店。建物はもとより、創業時からのこだわりであるネルドリップコーヒーや、ミルクセーキ、卵サンドなども人気。藤井さんは「これからも皆が集う温かい場所であり続けたい。池田先生の素晴らしさとともに、この場所の魅力を後世に伝えていければ」と意気込む。

 営業時間は11時~18時。土曜・日曜定休(第3土曜のみ禁煙営業)。

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