四谷ひろば(新宿区四谷4)内にあるNPO法人「市民の芸術活動推進委員会(CCAA)」で現在、江戸時代の四谷荒木町を再現するジオラマ作りが行われている。四谷・車力門通りで「とんかつ鈴新」を営む鈴木洋一さんを中心とした有志によるもの。
今回の活動は、昨年3月に九段下の千秋文庫で発見された1枚の絵がきっかけ。江戸時代の庭絵師によって描かれたものと思われるこの絵には、美濃高須藩(岐阜)・松平邸の屋敷や現在もその姿を残す策(むち)の池、車輪が描かれた車力門など、江戸時代の四谷荒木町が写し出されていた。鈴木さんをはじめ、同NPO理事長の鈴石弘之さんや事務局長の大澤延行さん、四谷ひろば会長の望陀宣夫さんら7~8人のメンバーが集まり、昨年夏から月1回のペースで活動している。
ジオラマ作りでは、荒木町の地形図を基に厚さ5ミリの段ボールを等高線に沿ってカットして張り合わせた土台を製作。紙粘土で細かい高低差を調整しながら覆っていく。3回目の作業となったこの日は、ジオラマの中心に位置する大きな池の仕上げと現在もその姿を残す策の池、杉や桜、紅葉などの樹木を製作した。
荒木町には昭和30年ごろまで松平の末裔(まつえい)が住んでおり、新宿通りから靖国通りまで下る坂には、西側に松平摂津の守の屋敷があったことから略して付けられた「津の守(つのかみ)坂」の名が残る。1983(昭和58)年には花柳界が消滅し、その後飲食店が増え始め栄えてきた。
「駅から離れているのにもかかわらずこれだけの飲食店が集まっているこの街の面白さの原点はここにあると思っている」と鈴木さん。「ジオラマを作りことで少しでも興味を持ってくれる人がいればうれしい」と笑顔を見せる。
ジオラマ作りは、今夏の完成を目標に活動を続けていく。