九段南の洋菓子専門店「ゴンドラ」(千代田区九段南3、TEL 03-3265-2761)が9月で90周年を迎えた。
1933(昭和8)年から親子3代にわたり営んできた同店は、パウンドケーキやマドレーヌ、洋生菓子、チョコレートなど幅広く展開する。2代目店主でパティシエの細内進さんは、海外旅行が自由化される前から渡欧し西洋の菓子技術を学んだ。アジア人で初めて「スイス国立リッチモント製菓専門学校」を卒業し、日本人で初めてパリの「ルノートル」で修業した経歴を持つ。帰国後、日本での洋菓子文化発展に貢献してきた。フランス共和国政府の農事功労賞受賞や、卓越した技能者「現代の名工」として厚生労働省に表彰されるなど、数多くの実績を重ねる。現在は全日本洋菓子工業会の副理事長も務める。
看板商品は丸型の「パウンドケーキ」(3,000円~)。風味を損なわないよう缶に入れているという。「甘すぎず、口溶けが良く、しっとりした舌触りは、日本人の嗜好(しこう)に合うように開発した独自レシピ」とも。
先代店主の思いもあり、店は1店舗のみ。「戦前から、戦後の何もない時や発展期、災害や未曽有の出来事まで、この地で全て見てきた。戦争の時、空襲後の焼け野原で鉄板を探し、ヌガーやトフィーを作っていたこともあった。そんな時でも菓子作りをやめることはなかった」と振り返る。
現在でも菓子研究に余念がないという細内さんは店の歩みを振り返り、「長い間多くの方に支えられてきた。本当にありがたいこと。一日一日が積み重ねで、私は真摯(しんし)にやるべきことをやってきただけ。皆さんに笑顔になってもらいたいという思いは、3代目店主の滋之にも受け継がれている。これからも変わらず店を守り続けていければ」と話す。
営業時間は9時30分~18時30分(土曜は18時まで)。日曜・祝日定休。