1912(大正元)年に牛込区谷町(現・新宿区住吉町)に創業した曙橋駅近くの和菓子店「大角玉屋」(新宿区住吉町)が今年、創業100周年を迎えた。
同店は「元祖いちご豆大福」の店としても有名で、1985(昭和60)年に三代目社長の大角和平さんが発案、販売を開始した。洋菓子・ケーキブームが飽和状態だった当時、ブームは和菓子へ移っていくという予想を偶然目にしたという大角さん。ブームを引っ張るきっかけとなるような商品ができれば和菓子ブームが来るのではないかと考え、ショートケーキに載ったイチゴにヒントを得て「いちご大福」の商品化に乗り出した。
焼く、蒸すなど加熱する工程が多い和菓子の中で、加熱しない大福にイチゴを入れることに決めたものの、当時和菓子で使用する果物といえば栗やアンズ程度。周囲からはさまざまな意見があったという。「食べる前は合うの?おいしいの?と言われたが、食べてみると意外と合う、おいしいと言ってもらえた」と大角さん。近隣にフジテレビがあったことやミスマッチがはやっていたこと、イチゴの旬である2月に発売したことなど、立地や時代などいろいろな要素が重なり1日3000個を売るヒット商品となった。
「昔の和菓子は甘さが強ければ強いほどよく、サイズも大きかったが、今は大きさよりも素材の風味やおいしさを求める品質重視。時代の変化、食文化、食生活の変化に合わせてサイズや砂糖の量などを変えている」と大角さん。現在、曙橋本店、銀座店、四谷店の路面3店舗のほか、都内を中心とした百貨店で展開しており、本店では「いちご豆大福」(230円)を含む常時約100種類の和菓子を販売している。
新宿区の和菓子店の数は、この10年~20年で3分の1ほどに減っているという。「続けていくことはなかなか難しいが、時代を乗り越えつないでいくことが大切。続けていくことがお客さまの信用にもつながり、それをどれだけ大事にして飛躍していけるかだと思う」と大角さん。「和菓子店の中には何百年と続いている店もあり100年ではまだまだだが、伝統を大切にこの先も努力し続けていきたい」と意欲を見せる。
創業100年を記念し、曙橋本店では14日・15日の2日間、いちご豆大福を半額、さくら餅や草餅などを特別価格で販売(11時~18時)。通年企画として、いちご豆大福に当たりが出たら同商品1個を進呈するくじを付ける。
営業時間は9時~19時30分(日曜・祝日は18時まで)。