かつて富士山の眺望の良さなどから、長い歴史の中で生まれた各地の「富士見」という地名。現在も「富士見」の町名が残る千代田区内には、3つの「富士見坂」が存在する。
場所は、富士見2丁目と九段北3丁目の間、神田小川町3丁目、紀尾井町と永田町2丁目の間の3カ所。いずれも富士山の姿を眺めることができない。
2005年に国土交通省の関東整備局は、景観の保全や活用への支援を通じた美しい地域づくり推進を目的とし、「関東の富士見百景」を選定している。選定は128景233地点。東京は、埼玉の戸田市・川口市を含めた「荒川下流からの富士」や、府中市、国立市、八王子市など都下を中心に17景が選ばれている。そのうち23区内では、文京区の「文京シビックセンター展望ラウンジ」、目黒駅周辺(品川区、目黒区)や田園調布周辺(大田区)、日暮里富士見坂(荒川区)などを含む「東京富士見坂」、世田谷区の富士見橋や不動橋を含む「富士の見える橋」の3景。
23区内には現在でも「富士見坂」という名の坂や、別名や俗称「富士見坂」が20以上存在するが、高層建築が進んだ関係で、そのほとんどは実際に富士山を見ることができなくなっている。既出の日暮里富士見坂が、地上から唯一きれいな姿を確認できることから、毎年1月30日前後と11月11日前後の2回、夕日が富士山頂に沈む「ダイヤモンド富士」を見ようとする多くの人たちでにぎわいを見せる。