新潮社(新宿区矢来町)が刊行した正縮尺の鉄道地図「日本鉄道旅行地図帳」シリーズが累計100万部を突破し、発売以来好調な売れ行きを維持している。
同書では、時刻表に掲載されている地図とは違い、ゆがみのない正確な縮尺の地形図上に現在営業しているすべての旅客鉄道と駅、廃線までも忠実に配置。昨年5月に1号「北海道」、その後「東北」「関東(1)」「関東(2)」「東京」「北信越」と毎月1冊1エリアごとに刊行し、全12号で日本の鉄道地図が完成。2月に10冊目となる「大阪」を発売した。
同書を企画した営業部の田中比呂之さんは、自他共に認める「鉄道ファン」。「子どものころからこのような地図が欲しかった」といい、正縮尺であることだけではなく、学校の授業で使用していたなじみのある地図帳と似た色合いに仕上げるなどのこだわりをみせた。
「1冊を100万部売るのは大変だが10万人に12冊であれば」と自信を見せるも、企画会議で「100万部売る」と宣言した際には「鼻で笑われた」という同社初の鉄道関連書。「専門出版社ではないので、売り方がわからなかった。どうやって鉄道ファンに知ってもらうかと悩んだが、気付いてくれさえすれば買ってくれるだろうと思っていた」と話す田中さんだが、発売した「北海道」は、初版6万部に増刷を繰り返し10万部超の大ヒットに。定期購読数は想定していた300~500を大きく上回る14,000にまで膨らみ、現在までにシリーズ累計108万部を売り上げた。
ヒットの要因について、田中さんは「自分と同じ思いの人がこれだけいたということ。いつか誰かが作ると思っていたが誰も作らなかった。ありそうでなかったというのが一番の要因」と冷静に分析。「タイトルに『旅行』の文字を入れたことや、鉄道ファンに人気がある『北海道』からスタートしたことも要因の一つでは」と話す。「(購入客の)3分の1が女性だったことは意外」とも。
一方、「社内は『驚き』の一言」と話すのは同社広報宣伝部の町井孝さん。「主な鉄道誌の基礎票が6万前後あることにも驚いたが、そこに想定外の女性ファンや旅行者が加わりこの結果になったのだろう」と分析。鉄道雑誌への広告のほか、エリアごとに刊行するという観点から地方性を重視し、地方紙を活用した広告展開を行ったという。
次の企画について、田中さんは「忙しすぎて何も考えていない」と話しながらも、5月20日に同書をもとにした白地図「乗りつぶしノート」を発売することを明らかにした。
100万部突破を受けまた売れ行きが伸びているという同書は、3月18日に11号「中国・四国」、4月18日に最終12号「九州」を発売。今秋には別巻「旧領土・旧植民地」の発売を予定している。最終的な販売部数について「130万部は固いだろう」(町井さん)と予測し、さらに完結時点でのセット購入者にも期待を寄せる。