飯田橋の名画座「ギンレイホール」(新宿区神楽坂2)がデジタルシネマ機を導入し、4月27日から始まるデジタル上映の準備を進めている。
映画のデジタル化が進む中、これまで配給会社から35ミリフィルムで配給されていた上映素材のほとんどがデジタル素材となり新作のフィルムによる配給は極めて少なくなっている。大手シネコンではすでにデジタル化が完了しているものの、小規模な映画館にとっては高額な機材を導入することは容易ではなく、廃業かデジタルシネマ機の導入かの選択を迫られる事態も起きている。
1974(昭和49)年に開館し、ロードショーが終わった映画を2本立てで上映している同劇場。これまでは最も早いもので公開から約3カ月で上映できていたものが、数少ないフィルムを全国の小規模館やミニシアターで取り合うため、上映までに時間がかかり、デジタル素材のみの新作作品が上映できないなど、利用客の要望に応えられない状況になっていた。
「見ていただきたい作品を機材の都合で上映できないというのは申し訳なく思っていた。新しい作品の中からフィルムで供給されているものを探すと本当に上映したいものでなくなってしまった」と久保田芳未支配人。同館の方針と利用客の要望に応えるため、今回の導入を決めた。現在、営業後の時間や合間を縫って上映準備を進めている。
今回のデジタルシネマ機導入により、上映作品の選択肢が広がり、劇場側の上映作業の簡略化が可能になるが、利用客からは「映画らしさ、映画の良さを感じられるフィルム上映を続けてほしい」という声も。同館では今後も35ミリフィルム映写機での上映を継続。デジタルシネマ機と併用する。
デジタル作品の第1弾となる上映作品は「桃(タオ)さんのしあわせ」(2011年、中国・香港合作)と「別離」(2011年、イラン)。5月10日まで。