「TOPPAN(トッパン)」(文京区水道1)が7月3日、デジタル技術を活用した文化財施設「デジタル文化財ミュージアム KOISHIKAWA XROSS(コイシカワクロス)」を小石川本社ビル1階に開設した。
「デジタル文化財ミュージアム KOISHIKWA XROSS」VR映像
2023年10月に「凸版印刷」から社名変更し、印刷テクノロジーをベースに幅広い事業展開を進めている同社。事業の一環として、日本や海外の文化財約60作品をVRコンテンツとして制作し、「デジタル文化財」として保有してきたという。齊藤昌典社長は「デジタルアーカイブを活用した新たな価値を提供したいと考え、当ミュージアムを設立した。単なるデジタル映像の観賞ではなく、五感で作品の魅力を感じられるよう工夫する」と話す。
ミュージアムは入り口となる「ゲート」に加え、「VRシアター」「ギャラリー」「エキシビションルーム」の4つのエリアで構成。VRシアターでは、全長2メートル、高さ5メートルの大型LEDカーブビジョンを設置し、文化財の映像作品を映し出す。480枚のLEDパネルを組み合わせ、高精細なVR映像を映すことで、「現地を訪れたかのような没入感を実現しただけでなく、実際の建物をVR上で分解して構造を見たり、秘仏の御開帳も観賞できたりする特別な体験もできる」とも。ギャラリーではインタラクティブな文化財鑑賞システムを採用。リモコンを操作すると画面上の文化財を動かすことができ、通常見ることができない作品内部の様子なども映し出すという。
壁面と床面へ映像を投影するエキシビションルームでは、同社の最新の研究成果などを鑑賞できる。直近では、伊藤若冲の幻の作品「釈迦十六羅漢図屏風」を、特殊な印刷技術を用いて着色し、デジタル推定復元に成功したという。担当者は「焼失した可能性が高いとされるこの作品の記録は、白黒の図版画像のみ。スキャニング調査やデジタル彩色を試みたほか、独特な表現方法である『升目描き』の立体的な方形も、特殊な印刷技術によって表現した」とも。
デジタル文化財活用を目指す団体や、自治体・企業などの共創パートナー向けに運用を始めるが、10月からは週末を中心に一般公開も予定する。齊藤社長は「新しい観光の形や教育ツールなどとしても提案できれば。これまでにない観賞体験を通じて、文化財の魅力を十分に体験いただきたい」と期待を込める。
一般公開に先立ち、8月24日・25日に限定先行公開する。参加申し込みはオンラインによる事前予約制で、鑑賞料金は500円。