神楽坂の路地に9月16日、手打ちそば店「東白庵かりべ」(新宿区若宮町、TEL 03-6317-0951)がオープンした。
店主の苅部政一さんは、16年前に千葉・柏のそば店「竹やぶ」の阿部孝雄さんに弟子入り。7月末に閉店した「竹やぶ 六本木ヒルズ店」では8年間店主を務め、ミシュランガイドで星も獲得した。店内に配置したテーブルや椅子、調理器具などは六本木店で使用していたものを譲り受け、スタッフも六本木店のメンバーで営業する。店舗面積は25坪。席数は22席。
幼いころから料理を作ることも食べることも好きで、作った料理を両親においしいと言ってもらえることがうれしかったという苅部さん。「竹やぶ」との出会いは16年前、苅部さんの父が偶然見ていたテレビ番組で紹介されていた「竹やぶ 柏本店」に食べに行って来るように言われたことがきっかけ。当時18歳だった苅部さんは、店構えや雰囲気に圧倒されながらも入店し、せいろと天ぷらを注文。そのおいしさに感動し、店を出てすぐに公衆電話から「働かせてほしい」と電話を入れたという。
そのときに電話をとったのが普段電話に出ることのない店主の阿部さん。遊びに来るよう言われ店に向かうと、すでにその年の新入社員は決まっていることを告げられたが、「1年間アルバイトをする。1年待ってでも入社させてほしい」という苅部さんの熱意が伝わり、2カ月後の4月からの入社が決まった。六本木店を任された時には、「責任感と信頼してくれているのだというありがたさを感じた」という。
神楽坂を出店先に決めたことにも、多くの偶然が重なっている。その日六本木店を訪れた女性客は、本店を訪れようとしていたが定休日だったため初めて六本木店を訪れた。苅部さんがあいさつへ向かい、7月末で閉店すること、新たな出店先を探していることを告げると、女性客は神楽坂で料亭を営んでおり間もなく店を畳む予定だという。阿部さんにも相談し、その場所が今回の出店場所となった。
今回の独立にあたり、本店にお礼参りに行きたかったという苅部さん。オープン数日前の忙しいスケジュールの合間を縫って本店に出向き、入社1年目同様に掃除をし、客として16年前と同じメニューを注文して食べると涙が出たという。
「温故知新ではないが、『竹やぶ』で教わったことを大切にしながら新しいことにも挑戦していきたい。料理を食べて喜んでもらうことが好きという自分の原点を忘れずに、神楽坂のお客さまにゆっくりとそばを楽しんでもらえれば」と話す。
主なメニューは、自家製粉手打ちのせいろそば、田舎せいろ、かけ(以上1,000円)、そばがき、とろろそば(以上1,200円)、にしんそば(1,700円)、天せいろ、天ぷらそば(以上2,300円)など。卵焼き(2人前より)、焼きみそ、豆腐(以上600円)、にしん、皮くじら(以上900円)、板わさ(1,300円)などの一品料理、予約制の「お昼のコース」(3,000円、5,000円)、「夜のコース」(8,000円)も用意する。
営業時間は、平日=11時30分~15時・18時~22時、日曜・祝日=11時30分~21時。水曜定休。