神楽坂通りに日本で唯一と思われる「逆転式一方通行」が存在する。
午前は坂を下り、午後は坂を登る一方通行になる同通り。時間によって方向が変わるのは、なぜか。故田中角栄元首相が朝、目白の自宅から国会議事堂に向かい、夜の帰宅に便利なため、この方式ができたとのうわさも存在する。牛込警察署交通規制係に話を聞いた。
「そういううわさはあるようだが記録には残っていない。例え大統領でも一個人でそんな決定はできないのでは」と、あくまでも否定。「午前中は坂を下り都心方向に向かう車、午後は坂を登る車が圧倒的に多い。交通量に顕著な違いがあるため、この策が採られた」とも。
「神楽坂がまるごとわかる本」の著書がある渡辺功一さんは「以前の神楽坂通りは対面通行だったが、歩道を作るにあたり車道が狭くなることから一方通行に変わった」と話す。しかし、一方通行にしたことで大久保通りなどは渋滞。当時、朝日新聞の投書欄には大々的に「神楽坂通りの一方通行は不便で困る」との声が寄せられた。これにより、「逆転式一方通行」が誕生。「このような通りは都内では唯一、日本でも唯一と言っていいだろう」と渡辺さん。「毘沙門天が神楽坂通りに夜店を出して縁日を行うことになり人が集まってきた。これでは車や馬が通れないと、歩行者天国が生まれた。歩行者天国といえば秋葉原や銀座が知られているが、この通りは歩行者天国のはしりでもある」とも。
平日12時~13時(日曜・祝日は19時まで)は歩行者天国になるため、時間になると車止めの看板が立つ。この日設置したのは、同通りの「田口屋生花店」(新宿区神楽坂1)の主人。「危ないので、出来る限り自分が設置しているが、気付いた人が置くという感じ。歩行者天国の時間が終われば、通りたい人が車から降りて看板を脇道に寄せることもある」という。