
小説家の京極夏彦さんが、2025年4月1日付けで印刷博物館(文京区水道橋1)の第4代館長に就任した。同館はTOPPANホールディングスが運営し、印刷の歴史や文化を伝える博物館。
「印刷博物館」前館長の金子眞吾会長(左)と小説家の京極夏彦さん
京極さんは小説家であると同時に自らの著書の装丁も手がけている。11日の記者会見で、前館長でもある同社の金子眞吾会長は「小説家として活躍するとともに、意匠家としての顔も持つ京極さんは、印刷や造本装丁の高い見識も併せ持っている。印刷博物館の新しい一面を、これまでと異なる視点から提示してくれるのでは、と期待している。印刷文化を通じた社会貢献活動としても、印刷博物館をより多くの人に知ってもらえれば」と京極さんの就任を歓迎した。
京極さんは就任に当たり、印刷技術とテクノロジーの進化の関係性についても持論を展開。「印刷の発明は、人類のコミュニケーションをはじめとする概念の在り方を大きく変え、その恩恵は計り知れない。デジタル化が進む現代においても、情報の複製や伝達という点では、テクノロジーの進化は印刷の概念の延長線上にある」と京極さん。「技術は目的があってこそ成り立ち、そうして初めて私たちの文化が形成される」とも。
同館が収蔵する資料についても触れ、「印刷という視点から見て、革新的な技術と表現が詰まっている重要な文化財が多く保管されていることに驚いた」と語り、印刷の歴史と文化を次世代へとつなぐ意義を強調。さらに、「印刷の文化は当たり前になりすぎて、その恩恵の大きさに気付かれにくい。改めて印刷文化の深さや広がりに目を向けられるよう、より多角的に、また親しみやすい展示を企画したい。行く末を見守っていただければ」と意気込みを見せた。
就任に伴い、京極さんの著作などを紹介する記念展示を3期に分けて行う。第1期は8月3日まで(第2期=8月5日~11月3日、第3期=11月5日~2026年3月1日)。