地蔵坂の路地裏にあるギャラリーショップカフェ「神楽坂 temame(てまめ)」(新宿区袋町、TEL 03-6228-1600)で、7月9日から「日傘工房パラソラ 伊藤ノブコの『ひ・が・さ』展」が開催されている。
作品は「風呂上がりに浴衣で出掛けたときや、木陰にいるときのような、夏なのに涼やかさを感じられる日傘」をイメージして、日傘作家の伊藤ノブコさんが手作りしたもの。オリジナルデザインの注染染め(浴衣や手ぬぐいなどに使われる手染め)のほか、着物やアメリカンコットン、アフリカンプリント、アジアンバティックを生地に使った日傘計約50本を展示販売する。価格は1~2万円。
期間中の午後は、伊藤さんが会場で傘の作り方を説明したり、生地を持ち込む客のオーダーメード傘の仕立て相談にも乗ったりする。「浴衣半分の大きさの生地で1本が目安」だという。
伊藤さんは1961(昭和36)年生まれ。実家は創業60年の洋傘店「丸清洋傘加工所」(北区)で、店主であり洋傘職人の父の傘作りを幼いころから見て育った。当時は洋裁や美術方面に進みたかったが、大学卒業後は家業を継がず、15年ほどPOP広告などのデザインやレタリングをする仕事に就き、趣味で油絵や抽象画を描いてきた。
しかし、45歳を過ぎて「あらためて美術を学びたい」と思い、一念発起して武蔵野美術大学に入学・卒業。その後、白い傘をキャンバスにして絵を描くことが展覧会などで認められるようになり、同時期に「高齢になる父親の技術を引き継ぎたい」とも思うようになったことから50歳で父に弟子入りした。
新しいデザインだと、1日に1・2本作るので精いっぱいだという。傘作りは「木型に合わせて生地を切って、縫って、張って、張り直して、縫い直して、の繰り返し」。作り方を一から説明するわけではない、昔の職人かたぎの父に、何百回と張り上がりを見てもらい、アドバイスをもらいながら技術を身につけた。
「生地の状態と張り上がりのギャップに驚きがある。まだまだ技術の勉強が必要で、新たな張り方や、生地の組み合わせなど、やってみたいことはいっぱい」と伊藤さん。今後も「傘を通して表現できることにチャレンジしていきたい」と意気込む。
営業時間は11時~18時。日曜定休。今月20日まで。