イカロス出版「廃道」本が好調-ブロガー増殖、退廃の美に注目集まる

売れ行きが好調な「廃道をゆく」(表紙)

売れ行きが好調な「廃道をゆく」(表紙)

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 ミリタリーや乗り物、趣味に関連する書籍を多く発行するイカロス出版(新宿区市谷本村町)が10月に刊行したムック本「廃道をゆく」の売れ行きが好調だ。

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 「廃道」とは、新道やトンネルの開通などの理由により、道路としての役目を終え、現在使われることがない放棄された道。ネット上を中心に注目を集めており、全国各地に点在する「廃道」を自転車や徒歩などで探索し、写真や動画を使って紹介するブロガーも登場し、「廃道」ファンの間で「廃れた・役に立たない」を意味する英語「obsolete」から「オブローダー(=廃道を好んで探索する人)」という言葉まで生まれている。

 著者は人気サイト「山さ行がねが」を運営する平沼義之さんと、ウェブ同人誌「日本の廃道」を発行する永冨謙さん。同書では「イチオシの廃道」「絶景が楽しめる廃道」「歴史が動いた廃道」「踏破困難な廃道」など7つのテーマに分類した日本全国の「廃道」44本に巻頭企画の1本を加えた計45本を紹介する。

 同社編集部の大野さんは「ルートマップや大きな写真を豊富に掲載することで、廃道を知らない人でも手に取っていただけるようにした」と話し、初心者にもわかりやすく解説した「廃道の楽しみ方 特別集中講座」の掲載や、ビジュアルによって読者が現地にいるような臨場感のある内容に仕上げた。価格は1,600円。初版部数は36,000部。

 同社は今年、路面劣悪や急こう配などのため車が容易に通行できない「酷道(こくどう)」にクローズアップした「酷道をゆく」「酷道をゆく2」を刊行し、約10万部のヒットとなっている。「酷道」本に続く「廃道」本のヒットに期待する大野さんは、同書のターゲットについて「マニアや著者2人のファンのほか、廃れたものが自然に帰っていく美しさ、『退廃の美』を求める廃墟ファン」と話す。

 廃道以外にも、廃工場や廃鉱、廃線などの「廃墟」一般についてはこれまでもマニア層を中心に脈々と静かなブームが続いていたが、昨今は「廃墟」関連の出版物やウェブサイトも数多く見受けられるようになり、2002年に発売された写真集「廃墟の歩き方」(イースト・プレス)や、今年発売されすべての「廃線」を正縮尺で載せた「日本鉄道地図帳」(新潮社)の人気など、「廃れモノ」「退廃の美」への注目が高まっている。

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