神楽坂の矢来公園そばにあるアートギャラリー「eitoeiko(エイトエイコ)」(新宿区矢来町、TEL 03-6479-6923)で現在、「ながさわたかひろ展 プロ野球ぬりえ 2012 ~魔球の伝説~」が開催されている。
同展では画家のながさわたかひろさんが、2012年における東京ヤクルトスワローズの全試合(公式戦144試合、クライマックスシリーズ3試合、計147試合)の名場面を、ペンと色鉛筆だけで描いた原画57枚が紹介されている。各選手の表情から投球・打撃のフォームに至るまでが忠実に再現され、対戦チームの表情や動きも捉えられている。ヤクルト全選手の似顔絵を版画にしたものに、球団を通じて国内の同選手らから各自サインを入れてもらった作品なども並ぶ。
ながさわさんは1972(昭和47)年山形県生まれ。2000年に武蔵野美術大学大学院を卒業後、2006年から2年間同大学版画専攻非常勤講師を勤めた後、教職を辞して2009年からプロ野球を題材にした作品制作に専念してきた。
当初は、ながさわさんがファンだった東北楽天ゴールデンイーグルス前監督の野村克也さんの任期最後(2009年)の年に、そのシリーズ全試合を見届ける版画を制作しようという動機から始まった。「スター選手がいる一方で埋もれていく選手も多い。その状況と自分自身の境遇とで重なり合う部分にドラマを感じた」とながさわさん。そして、2010年は同チームでも特に思い入れが強かった野村監督の退任と一場靖弘投手の移籍をきっかけにヤクルトを追い描くようになったという。
以降、ヤクルト戦を毎試合リアルタイムで観戦することを自らに課し、初めは銅版画で、翌年はシルクスクリーンでと作品に起こしながらこれまでヤクルト戦を画題にした個展を4回開いてきた。多色使いの作品は今シーズンが初となる。
創作のモチベーションについてながさわさんは「球場やテレビの前には、一人一人好きなチームや選手に対してものすごい『思い』を持って真剣に一喜一憂しながら応援するファンの姿がある。その姿ははたから見ていてもすてきだし、プロ野球を支えていると思う。その思いを形にして表したいと思った」と話す。「その『思い』は選手にも伝わるということを証明したい」とも言い、今後も「絵を描くことで一選手として(の気持ちで)これからも応援していきたい」と意気込みを見せる。
開館時間は12時~19時。日曜・月曜休廊。入場無料。12月15日まで。